摩擦に敬意を表して

敬意を表して

先日北海道に行く機会があったのですが、雪が降った日よりも翌日の朝の方が滑るのですね。積もった雪がその圧力と夜間の寒さで凍って滑りやすくなるとか。氷のない地面のなんと安定すること、地面の摩擦のありがたさを実感しました。少し意外ではありますが、この氷の上の滑りやすさも最近解明されたのですね。摩擦によって、厚さ数100nmから1μmの水の層が生じるそうで、この層は粘弾性と粘着性のある油のような水でできていると。

氷の上が滑りやすい理由、ついに判明か――100年以上の謎への挑戦 - fabcross for エンジニア
日本のスケート選手が氷上を軽快に滑る姿を見るのは実に心地よいものだが、氷の上が滑りやすい理由は、実はよく解っていない。 これは100年以上前から議論され続けている課題だ。よくある説明は、スケートのブレードが氷に高い圧力を

これもまた氷の上の話ではありますが、氷の上でストーンを滑らせて点数を競うカーリング。このストーンがなぜ曲がるかも世紀の謎だったそうです。氷とストーン下部の微細な衝突が左右非対称で起きることによって旋回すると。ここ100年で微細な運動が観測できるようになって次々解明されているのでしょうか。

世紀の謎「カーリングはなぜ曲がるか」を精密観測で解明 | 立教大学
立教大学(東京都豊島区、総長:西原廉太)の村田次郎理学部教授は、カーリング競技で用いられるカーリング石が「反時計回りに回転させると、進行方向に向かって左側に曲がっていくのはなぜか」という、98年間にわたって科学者の間で真っ向から対立する仮説...

そもそも、この摩擦という現象、現代の研究でもよく分からないのですね。物質にどんな条件下で、どれほど静止摩擦力が生じるかは、実験してみないと分からないと。そして、物質間に働く摩擦力を計算するのも難しいみたいです。実生活で、コップを持つときも、ブレーキをかけるときも、摩擦がある感触は分かるので、摩擦があるのはすごく当たり前な感じではあります。原理は分からずとも摩擦が無かったら日常が成り立たないと思われますので、摩擦の存在に敬意を持ちたいと思っています。

最新の物理学でもいまだに解明できていない「摩擦力」…実はよくわかっていない「摩擦」のしくみ(田口 善弘)
物理に挫折したあなたに——。読み物形式で、納得!感動!興奮!あきらめるのはまだ早い。大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。

身近な摩擦以外を調べてみると、プレートが沈むときに摩擦で隣接するプレートを引きずり込む、地殻運動があるそうです。地殻運動も摩擦の結果なのですね。

海底地殻変動観測について | 地震本部

また、海の満ち引きによって動く海水と海底にも摩擦は発生し、潮汐摩擦と呼ばれているようです。この摩擦によって地球の自転が少しずつ遅くなるとか。水も摩擦を生むのですね。規模が大きいからでしょうか。

潮汐摩擦 | 天文学辞典
潮汐作用により天体が変形することに伴う摩擦現象のこと。たとえば地球の場合には、月と太陽の潮汐作用で海水が移動して変形する(海洋潮汐という)が、この際に生じる海水と海底(固体地球)の間の摩擦が顕著である。程度に差はあるが、海水に限らず、地殻や

そして、宇宙からの隕石が大気との摩擦熱によって燃えることで地表が守られているという話もあるようです。摩擦バリアのようなものでしょうか。大気圏の摩擦力スゴイ。

国立科学博物館-宇宙の質問箱-小惑星・彗星・流星・隕石編

未知の部分が多いとはいえ、普段意識せず摩擦の恩恵にあずかっています。摩擦あっての日常ということで。摩擦スゴイ。地球スゴイ。

タイトルとURLをコピーしました