地球上で最初に光合成を行った生物と言われるシアノバクテリアを調べていたら、パラドクスという表現に遭遇しまして。パラドクスは矛盾、直観的に受け入れがたい、ジレンマなどの意味で使われることが多いようですが、生態系関連でもかなり種類のパラドクスがあるようです。
シアノバクテリアに関する「酸素パラドクス」は、光合成には窒素が必要だが、光合成で生まれた酸素は窒素を取り入れる酵素ニトロゲナーゼを破壊してしまう、というものだそうです。シアノバクテリアは窒素が欠乏すると低酸素状態で光合成を行って、このパラドクスを解消しているのだとか。これはジレンマ関連のパラドクスですね。
他にジレンマ関連でいえば、理論上は多様性と安定性の両立が難しいとされる中で、自然界では両立しているという、「多様性のパラドクス」。最近では新たな生態系モデルが考案され、生物が食物量に応じて食物を選択するのであれば、食物網が複雑であるほど柔軟性が増し、結果として安定する、というパラドクスを解消する理論も出てきているようです。
少し似たパラドクスで、限られた栄養環境下で予想よりも多くのプランクトンの種が共存している、「プランクトンのパラドクス」があるそうです。競争原理で単一の種が優占することなく、なぜか共存んしていることが理論に反するみたいです。
次は直観に反するパラドクスですが、「オキアミのパラドクス」は、クジラは捕食しているオキアミより多くのオキアミの個体数を支えている、というものだそうです。クジラの糞は大量かつ鉄などの栄養が豊富で、植物プランクトンがその鉄を摂取し、オキアミが植物プランクトンを食べて、より増えていくと。エネルギーが保存されるのではなく増大している感じが、直観に反した現象に見えるのでしょうね。

また、合理性に反するように感じるパラドクスで、栄養が豊富なのに植物プランクトンの量が少ない「南極パラドクス」。逆に栄養が少ないのに生物が多い「サンゴ礁のパラドクス」、餌が少ないのに多くの回遊魚が集まる「黒潮パラドクス」などがあるようです。黒潮は、乱流が表層部の栄養を巻き込んでいたり、今まで見過ごされていた動物プランクトンの糞やゼラチン質動物プランクトンが餌になっていた、などの発見で解明されつつあるようです。
他には「熱帯季節林のパラドクス」があるようです。雨が降らない乾季には、蒸散を防ぐために樹木は葉を落とすようなのですが、まだ雨季になっていないのに葉を出すのだとか。葉を出しても根から吸える水が少ないので、生存戦略に反した現象と考えられているそうです。何か意味がありそうではありますが。
コストがかかる有性生殖をなぜ選ぶのかという「有性生殖パラドクス」などもあるようですが、一見矛盾しているというテーマは、そこに未発見の謎があるようで面白いですね。生態系のスゴさを発見することにも繋がりそうです。生態系パラドクス、スゴイ。地球の生態系スゴイ。