ゆっくり動くものに敬意を表して

時間に敬意を表して

電気を調べていると、生体内の電気の速度が出て来まして、思ったよりもゆっくりな速度だったのです。実測された脳の神経回路の電位の伝播速度は、0.2~1.5m/秒なのだそうです。生体のサイズにとっては一瞬で伝搬する速度だとは思われますが、電気の速度=ほぼ光速、というイメージと比べるとゆっくりに思えるのかもしれません。

脳内の神経信号の伝播速度は時々刻々と変動していることを明らかに | 東京大学

そして、電気の速度も、ほぼ光速というのは電位の伝搬速度であって、電子の移動速度はかなりゆっくりで、カタツムリのような速度なのだそうです。銅などの導体中の電子の平均移動速度は0.075mm/秒という話もあるようで、実際は電線の周りに発生する電磁界が電力を運んでいるということのようです。電子の速度自体はもっと速いのですが、動きがランダムなので、移動距離を考えるとこのような速度になるのですね。調べてみましたが、カタツムリの移動速度は、1~2mm/秒のようです。

導線が運ぶ電力は光速だが電子が進む速さはカタツムリ | 公益社団法人日本鋳造工学会 中国四国支部
電線を電気が進む速さには2種類あり、電線を電位差や電力が伝達する速さはほぼ光速で、マイナス電荷である電子が進む速さはカタツムリのように遅いという。 しかし光の速さで進む電磁波は導体の中には進入できないことが解っている。それでは電位差や電力を...

ゆっくり動く生物として有名な、ナマケモノの移動速度は40cm/秒、キーストーン種であるサバクゴファーガメの移動速度は8cm/秒だそうです。ゆっくり動く生物は、エネルギーの消費をギリギリまで抑えているそうで、ゆっくり動くのは身を隠すのにも都合がいいのだとか。他には、ゆったり生きる海の生物として、マナティー、ウミウシ、ニシオンデンザメも移動はかなりゆっくりだそうです。ニシオンデンザメは400年以上生きる長寿な生物でもあるようで、ゆっくり生きることと寿命も関係があるのでしょうか。

ナマケモノやカメはなぜのんびり生きられる?
のんびりした動きしかできない動物たちは、迫り来る危険から走って逃げることができない。彼らはどのようにして身を守り、生存競争に勝ち抜いてきたのだろうか。

他には、大陸プレートの移動は18cm/年=0.000006mm/秒で、ゆっくりと動いているそうです。あまりにゆっくりなので実感することは難しいと思われますが、数千kmに及ぶプレートが常に動き続けているということは凄いことですね。

東北大が日本海溝に沈み込む太平洋プレート速度の実測に成功

生体電気や電子の速度は意外でしたが、生命活動にとってはその生体電気の速度で充分であり、電力の伝搬にとってもその電子の速度で充分なのですね。速度自体にも、その速度であることの意味があると思われますし、ゆっくりな生物にとってもその速度がある種の生存戦略だと思われます。特にナマケモノは、戦わずにのんびりと平和で、自らに苔やガを住まわせて共生し、その苔を食べたり決まった場所に糞をすることで循環を作り出し、徹底した小食と低エネで生きているようです。ナマケモノ、スゴイ。

体に蛾を住まわせ、藻を栽培するナマケモノ - 株式会社バイオーム
ナマケモノは、週に一度ほど、わざわざ地面近くにやってきて、排泄をすることが知られていました。この行動は、捕食者

そして、地球の営みも、見えないところで壮大なスケールでゆっくりと動き続けているのですね。ゆっくり動くもの、スゴイ。速いものからゆっくりなものまで、地球に存在する速度のスケール、スゴイ。

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