樹を調べていると、樹皮がメタンを吸収するという話が出てきました。メタンは、正四面体の分子構造を持つ無色無臭の気体で、天然ガスの主成分となる炭化水素だそうです。空気中のメタンは、太陽光の熱を吸収して地表に放出することで、地表を暖める温室効果を持つようで、温室効果がないと地表はマイナス19℃になるのだとか。メタンは生態系の炭素循環においても重要だそうですが、多すぎる分は吸収できた方が良いようです。
メタンを吸収するのは、土壌のみと考えられていたようですが、樹皮もメタンを吸収するのですね。土壌には、メタン酸化菌というメタンをエネルギー源とする微生物がいるそうで、樹皮にも同様の菌がいるようなのです。その吸収量は土壌以上になる可能性があるようで、地球全体の樹皮の表面積を計算すると、地球の陸地面積と同じくらいになるのだとか。確かに、樹皮の表面はフラクタル構造のように入り組んでいるものもあり、人間の少腸の表面積がテニスコート1つ分になるのと似た感じでしょうか。

樹皮はひび割れたり、剥がれ掛けたりしているものもあり、小さな動物や昆虫などが越冬する際の住処になったりしているようです。また、樹皮に生息する地衣類という菌類と藻類の複合生物は、菌類が藻類を保護し、藻類が光合成して生きているようですが、窒素固定を行うこともあるようです。メタンの吸収や窒素の固定など、樹皮と土壌はかなり似たような役割を果たしているのですね。
他には、樹皮は雨水にも影響を与えているようなのです。森に降る雨は、直接地面に落ちる林外雨と、木の上部を通過して森の中に滴り落ちる林内雨があり、その林内雨のうち、幹を伝わって流れ落ちてくるものを樹幹流と呼ぶそうです。樹幹流には、樹液などの成分が含まれ、針葉樹の樹幹流は酸性寄りになり、広葉樹の樹幹流は中性寄りになるそうです。樹皮は、土壌に至る雨水のphを左右するのですね。
また、腸の働きのように、雨水を樹皮の内側から吸収することもあるようで、樹皮の構造が入り組んでいると、樹幹流による雨水への影響が強くなったり、吸収する雨水の量も多くなったりするようです。樹皮スゴイ。

樹皮は、抗酸化作用があると言われるポリフェノールやフラボノイドを多く含むものもあるみたいです。病気のサルの中には、ある種の樹皮を食べることで、寄生虫の掃き出しや、滅菌・鎮痛などの薬理効果を得ている可能性があるのだとか。樹皮は、様々な生き物に薬のように使われているのかもしれませんね。

樹皮を調べてみましたが、メタン吸収、表面積の多さ、窒素固定、樹幹流、薬のような作用など、多くの役割を果たしているのですね。樹皮の役割スゴイ。地球の生態系スゴイ。