ニッチ分割に敬意を表して

生物に敬意を表して

動物大移動を調べていたら、一緒に移動するヌーとシマウマは、エサが競合しないように、ヌーは草の葉先を、シマウマは草の根元を食べることで共存しているという話が出て来ました。エサなどの重複を避けるような共存の仕方をニッチ分割と呼ぶようです。ニッチは、エサを含め生息場所に最も適応した生物が占める範囲のことのようで、生態的地位とも呼ばれるそうです。

場所をズラして共存(棲み分け➀)

生息場所をズラして、活動やエサが被らないようにするニッチ分割を、棲み分けと呼ぶようです。川魚であるイワナとヤマメは、水温が冷たく流れが緩やかな上流にイワナ、少し暖かく流れが速い中流にヤマメ、と棲み分けているのだとか。棲み分けは、多くの動植物が行っているイメージがあります。植物が群生していたり、動物のなわばりも棲み分けの1例なのかもしれませんね。

イワナとヤマメのすみわけ
イワナはヤマメよりも上流の冷たい水温帯に多く分布します。その理由として、1951年に今西錦司が提示した水温を原因としたすみわけ説が世間には広く浸透しています …

時間をズラして共存(棲み分け②)

同じ生息場所・同じエサで、採食の時間をズラすことで被らないようにするニッチ分割も、棲み分けと呼ぶようです。時間をズラすには、昼と夜で分けるパターン、季節で分けるパターンがあるようです。昼行性と夜行性はワシやフクロウが該当するようで、共通のエサである小動物の捕食を昼と夜で分けているみたいです。動物や植物も季節的な活動時期があるのは、共存のための棲み分けと捉えることもできるのですね。

エサをズラして共存(食い分け)

同じ生息場所で、食べるエサをズラすことで被らないようにするニッチ分割を、食い分けと呼ぶようです。ササ類を食べるシカ・針葉樹を食べるカモシカや、草と食べるシマウマ・樹の葉を食べるキリン、水面にいて大腸菌を食べるゾウリムシ・水底にいて酵母菌を食べるミドリゾウリムシなどがいるようです。

競争の本質は競争しないこと。強者の土俵では戦わず、しかし戦う武器は捨てない
「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の書籍『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設...

少し変わった例では、アフリカのタンガニーカ湖の魚の鱗を食べる魚には、右利きと左利きがあるようで、右側の鱗と左側の鱗で食い分けをしているのだとか。

右利き・左利きの獲得メカニズムを魚で検証 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
「右利(き)き・左利(き)き」といった行動の左右性は、私たち人間に限らず、多くの生き物に見られる現象だ。発達段階でいつどのように利きが獲得されるかはこれまで長い間謎に包まれていたが、その獲得のメカ

多次元ニッチ分割

佐渡島はヘビが多い島のようで、7種のヘビが複数のニッチ分割(時間帯・季節・場所・食性)を組み合わせて共存しているようです。シマヘビとヤマカガシはニッチが重なっているようですが、ヤマカガシの方が秋により活動する傾向があるそうです。この組み合わせは多次元ニッチ分割と呼ばれているようですが、生息範囲が限られていると、共存のための工夫も細かくなるのですね。

時間帯季節場所食性
シマヘビ春~秋低地カエル類
アオダイショウ春~秋低地げっ歯類
ヤマカガシ春~秋低地カエル類
シロマダラ山地爬虫類?
ニホンマムシ昼夜山地げっ歯類
ジムグリ昼夜春~秋低地げっ歯類
ヒバカリ昼夜低地ミミズ類


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ニッチ、スゴイ

生物の多様性は、なんとなくワチャワチャ集まっているうちに自動的に共存できているようなイメージでしたが、細かい工夫があるのですね。生物の種の特性や強味が生きた結果として、ニッチが確立されたと思われますが、共に生きるということには複雑に関係し合った相互作用があるような気もします。限られた資源を分かち合う仕組み、ニッチ分割、スゴイ。地球の生態系、スゴイ。

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