油を調べていると、混ざり合わない水と油を混ぜる性質を持つ界面活性というものが出て来ました。水と油が作る境界線である界面を、混ぜ合わせることを活性というようです。水も油もそれぞれ有用な特性があり、特性が際立つと互いに異質なものになると思われますが、界面活性は、その異質なもの同士を繋ぎ合わせるという働きになるようです。
親水性+親油性
界面活性物質は、マッチ棒のようなイメージの分子で、頭の方が親水性(水になじむ)、もう一方が親油性(油になじむ)という両親媒性の構造を持つ物質のことだそうです。水と油の両方に触れることが可能な水と油の界面に集まり、ミセルと呼ばれる油を包む球体のような構造を取るようです。この球体は外側が親水性で内側が親油性のため、水の中の油を包んで小さく分離する乳化と呼ばれる働きになるのだとか。
ミセルを構築する分子の数を会合数と呼ぶようですが、会合数が30以下の場合にはプラトン立体という正多面体の面数(4,6,8,12,20)の値でミセルを形成するのだとか。これは従来の理論では説明がつかないようで、この不思議なミセルはプラトニックミセルと呼ばれているそうです。これは、何かの法則がありそうですね。
消化を助ける
油は高効率なカロリーですが、この油を小さなミセルに分散させると消化吸収しやすくなるのですね。哺乳類などでは肝臓で生成された胆汁酸が、脂肪分を乳化して、消化酵素と接する反応面積を増やすのだとか。同様に、微生物もバイオサーファクタントと呼ばれる界面活性物質を出すことで、周囲にある油分を細かくして吸収しやすくするみたいです。また、大豆・ひまわりの種・ゴマなどに含まれるレシチンと呼ばれる界面活性物質は、それらを食べた動物の脂質の消化を助けて、糞として種を散布することを促進するようです。油を細かくするという働きが大事なのですね。
膜を作る
界面活性物質は、ミセル構造以外に、[外]親水性ー親油性[内][内]親油性ー親水性[外]という構造を連ねることで、リン脂質二重層と呼ばれる2重の膜を形成するようです。内側に何もないミセルを潰して引き延ばしたような形で、膜が形成されるのですね。大豆などに含まれるレシチンはリン脂質の1つのようです。この2重膜によって、細胞膜やオルガネラと呼ばれる小器官の膜が作られているようなので、界面活性物質がなければ、生体を維持することができないのですね。
菌などから防御する
界面活性物質は、膜を形成することもできると同時に、脂質(油)から出来ている膜を小さく分散して(乳化)溶解することもできるようです。脂肪の消化を助ける胆汁酸は、小腸や胆管での細菌を破壊するようで、細菌が繁殖するのは胆汁酸が届かない大腸なのだとか。胆汁酸、重要ですね。
また、マメ科植物、ウリ科植物の生成する界面活性物質であるサポニンは、その苦みと界面活性作用から、菌や昆虫からの防御を行ったり、酵素を阻害して消化し難くすることで食べられ難くする働きがあるのだとか。
界面活性の特性は、膜を作れる働きが、ときには膜を破壊する働きになったり、消化を助ける働きが、ときには消化をし難くするなど、条件によって活性する対象が異なり、まるで真逆のように働くのですね。親水性+親油性というのは凄い特性ですね。
表面張力を弱める
界面活性物質を水に入れると、水側に親水性側が、空気側に親油性側が集まり、水面に微小な窪みができて、表面を張ろうする力が阻害するようです。
水が丸く集まろうとする表面張力が弱まり、水が薄く伸びる形になり、葉の表面の水分が均等に広がることで、葉の気孔が開き易く、蒸散を行い易くなるのだとか。蒸散が強くなると、根から水を吸う力も強まるようで、葉の表面に界面活性物質を発生させることは、雨が少ないときの対策になっているみたいです。
また、種子の表面から出る界面活性物質は、水に溶けて表面張力を下げ、種子への水の浸透を助けて発芽を促す働きがあるようです。
界面活性スゴイ
界面活性物質の特性自体はシンプルな気もしますが、異質なものを繋げるということで生み出される働きの多いは凄いですね。水も油も凄い特性を持っていると思いますが、両者が手を組むとさらに凄い化学反応が起きるのですね。異質を繋ぐ界面活性スゴイ。地球の生体の仕組みスゴイ。