キーストーン種を調べていると、ゾウの話が出て来ます。キーストーン種は個体数が少なくても生態系の要石となる生物種のことのようで、ゾウの体の大きさと力強さとその生態によって、生態系の生物は大きな恩恵を受けているようです。ゾウは、サバンナにいるアフリカゾウ、森林にいるアフリカマルミミゾウ、アジアゾウの3種で、地球最大の陸上哺乳類なのだとか。
生態系エンジニア
まるで工事をするように環境を改変して、生態系に貢献する生物を生態系エンジニアと呼ぶようです。ゾウは、その力強さで木を倒すようですが、倒された木はヤモリなどの住処になったり、適度に木が間引かれた隙間には風や光が通り、森林の新陳代謝となっているようです。また、6~7tに及ぶゾウの体重の重さによってできた深い足跡には、水たまりができてカエルの繁殖地となるのだとか。乾季に水を得るときには枝を使って穴を掘ったり、井戸のように地下水を堀り当てたりもするそうです。ゾウは整地・解体・間伐・掘削工事を行ってくれるのですね。
循環を促す
ゾウは、多くの植物を食べ、果実や種子も食べるので、その糞には種子が含まれるそうです。種子の中には、アカシアやバオバブの種子など、大型の哺乳類の腸を通ることで発芽しやすくなる種(Endozoochory)もあるようで、その散布は動物被食散布と呼ばれるようです。その糞は、適度に湿ってカエルや虫やキノコの生息地となるようで、生命の多様性が見られるようです。
そして、ゾウが生涯を終えた後の骨は、他の草食動物にリン、カルシウム、マグネシウムなどを提供するようで、こういった行為をオステオファジー(骨食)と呼ぶようです。糞や骨が生物多様性を生む様子はクジラに似ているようにも思われますが、巨大な生物は、その影響も巨大なようです。

遺伝子的要素
ゾウの特異性は遺伝子にも表れているようで、器用で万能な鼻には、動物最多と言われる2000を超える遺伝子ファミリーを持つようです。鼻は優れた嗅覚と共に、15万以上の筋肉もあり、その力強さも突出しているのだか。
また、ゾウはガンになりにくいようなのです。通常は体が大きい生物程、細胞分裂の回数が多いため、エラーが起きてガン細胞になる確率も上がるという説がある中、ゾウはその説に反するようです。ゾウはp53というタンパク質を大量に生成して、エラーが起きた細胞を速やかに排除しているのだとか。これが巨体で長寿を維持する秘訣なのかもしれませんね。
ゾウの特殊性
ゾウは、数キロ離れた相手とも、低周波(地面の振動)を足で感じ取ってコミュニケーションを取ったり、互いの名前を呼び合うこともあるのだとか。また、遊ぶ、笑う、仲間の死を悼む、などの様子も見られるようで、心の部分は判断しようがありませんが、見ている側にも伝わるものがあるのでしょうね。

また、鏡で自己を認識できるのか、というミラーテストと呼ばれる試験があり、動物の中でこれをクリアしたのは、類人猿(ゴリラだけはなんと不合格)、イルカ、カササギ、とゾウのみなのだそうです。そもそも自然の中だと鏡はあまり存在しないと思われますので、自分の姿を見るということ自体が希少な体験なのかもしれませんね。生物の大半は自分の姿を知らずに生涯を終えるのかもしれません。

ゾウ、スゴイ
ゾウは、激しく起こるとライオンやカバも逃げ出すようですが、雛のいる木は倒さないなど、その優しさに関するエピソードも多くあるようです。他には、ゾウはアルコールに弱く酔っぱらい易かったり、ジャンプできない唯一の哺乳類だそうですが、これほどエピソードに尽きない動物も珍しいかもしれませんね。凄く強いのに、見ると癒されるような気もするのも不思議ですね。ゾウ、スゴイ。地球の生体系、スゴイ。