火に敬意を表して

敬意を表して

雷を調べていると、火の話もよく出てきます。人が火を使わない、本来の自然の中では火はどのような位置付けなのでしょうか。雷が落ちた付近に窒素を提供し、火山が灰によってカルシウムを提供するように、火も自然によって重要だと思われます。乾燥した環境では、枯れた植物が微生物に分解されないため、倒れた植物が地面を覆ってしまい、他の植物の生長を妨げてしまうそうです。火は、そんな枯れて倒れた植物を燃やして取り除いてくれるそうです。

自然に有益だったはずの山火事は、こうして「地球の脅威」へと変化した
米西海岸を中心に広がる山火事の勢いが止まらない。気候変動の影響で世界各地で森林火災が頻繁に発生するようになり、いまや地球環境を脅かす危機のひとつになっている。本来は健全な森林に欠かせない自然現象だったはずの森林火災は、なぜここまで猛威を振る...

樹皮の厚い木は生き残り、病気の木などは燃えて新たな土壌になるなど、適度な火は森の生態系に必要なのだそうです。特定の種が過剰に成長することを防ぎ、新たに日の光が入る場所が増え、燃えた跡の炭化物で新たな芽が出てくると。自然の火は、落雷による火事や乾燥して猛暑による山火事、噴火による炎のイメージで、パワフルなものが多くほぼ災害のような認識だったのですが、適度な範囲の火というのがあるのですね。

響 hibi-ki / 樹が燃えるとき文化も森も豊かになる
近頃は焚火ブームもあってか、各地で焚火のイベントを見かける機会が多くなりました。キャンプのために薪を買うという人も増えているでしょう。樹を使って火を燃やすという行為は、有史以来人間がずっと続けてきたことです。そう、樹と火と人の三角関係には数...

森林や草原の燃焼が起こると、灰による土壌改良、生長を阻害する物質の除去、光条件の変化に加えて、種子の発芽や芽の成長を促進することがあるそうです。どうやら植物の灰や煙に含まれている化合物が、休眠性の種子の発芽や幼植物の生長を促進するようなのです。植物にとっては燃えることが想定の範囲にあるのでしょうか。まるで火との共存を前提としたシステムがあるかのようです。

論文の紹介: 植物の灰や煙に含まれる化学物質が種子の発芽と幼植物の生長を促進する (農業と環境 No.163 2013.11)
論文の紹介: 植物の灰や煙に含まれる化学物質が種子の発芽と幼植物の生長を促進する

また、火があることが前提のケースとして、火事などの熱刺激を利用して種子散布をするバンクシアという植物がいるそうです。火の高温で、殻が開いて種子がばらまかれて芽が出るんだそうです。火を利用する種子散布はセロティニーと呼ばれるそうです。そして火事終息後に芽が出るようになっているのだとか。火に耐性があったり、火を利用する植物をパイロファイトというのですね。

燃えることで種子をばらまく「バンクシア」とは?
Forest fire flickr photo by Ervins Strauhmanis shared u ...

そして、エサを捕まえるために火を利用する鳥がいるそうです。ファイアーホークと呼ばれる鳥は、火のついた枝をくちばしで運び、獲物が火から逃げるところを捕まえるようです。また、脚の付け根に熱センサーを持っており、野火で焼けたあとの木に集まる昆虫もいるのだとか。

わざと森に「放火」する鳥たちの行動理由とは? - ナゾロジー
法で裁けない放火魔が野生にいるようです。しかもその起源は、人間が火を使うようになるよりも古いかもしれません。現在オーストラリアは異常気象に見舞われ、最高気温を更新し続けています。その結果として、広い範囲で森林火災が起こっています。しかし消防...

人類が火を使う前から存在している植物や昆虫や動物が、火を利用するシステムを持っていたとしたら、生態系や各種循環に火という現象が組み込まれていることになると思われます。そもそも地球にはマグマがあり、高温エネルギーは重要な自然の一部でした。人にとって火は必要不可欠だと思われますが、地球上の多くの生命にとっても必要なのかもしれません。火スゴイ。地球スゴイ。

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