植物、鉱物、昆虫などを調べていると、それぞれに引張強度の話が出て来るのです。引張強度は、物質が引っ張られたときに壊れずに耐えられる力の強さのことのようで、材料や繊維の分野で使われている指標のようです。生体においても、物を持ったり、ぶら下がったりすると、身体に引っ張る力が掛かるように、物質の両側を外側に引っ張る力を引張力と呼ぶのですね。

地球の内部の高圧環境や、大気圏上空の低圧環境など、重力による圧縮力や耐圧の話も多く出て来るのですが、日常では高圧や低圧が掛かる方が少なく、引張力や耐引張の方が日常的だと思われます。魚もヒレには、体と水の抵抗によって引張力が働くようですし、植物の枝や葉には、幹と風によって引張力が働くようです。
動物や昆虫など、翼や羽で空を飛んだりする生物に対しては、翼や羽には上に向かう揚力が掛かり、体には下に向かう重力が掛かるために、引張力が働くようです。また、手や糸で木にぶら下がったりする生物に対しては、手や糸には上に向かう木の応力が掛かり、体には下に向かう重力が掛かるために、これもまた引張力が働くようです。特にクモの糸は強いことで有名で、引張強度が最高で約1600MPaになるそうで、1mmの太さで100kg以上の重さに耐えるのだとか。鋼鉄が約500MPaらしいので、鋼鉄の約3倍強いのですね。
岩石は引っ張りにあまり強くないようで、花崗岩は10MPa、石英は50MPa、植物の中で最も引張強度が高いのは竹で約400MPaなのだとか。天然の金属の中で最も引張強度が高いのはタングステンだそうで最大1500MPaになるそうです。比較してみると昆虫の作り出す糸は凄いのですね。カイコの絹糸も鋼鉄と同じくらいの強さになるようで、ミノムシの糸はクモの約2倍の強度にもなるのだとか。
また、西欧のカサガイという海貝が、クモ糸を超える引張強度を持つようなのです。カサガイの持つ歯は、キチン質の土台を針鉄鉱のナノ結晶で強化した構造になっているようで、その強さは約5000MPaになるそうです。生物学的素材においては、これが自然界で最高の引張強度となるようです。カサガイ、スゴイ。

他に調べてみたところ、引張強度の最強はダイヤモンドのようで、約60000MPaにもなるそうです。ダイヤモンドを引っ張るというイメージはありませんでしたが、炭素原子のダイヤモンド構造は引っ張りにも圧力に強いのですね。人体についても調べてみましたが、髪の毛は約200MPa、アキレス腱などの腱は約100MPaなのだそうです。引っ張りに抵抗する力があってこそ日常が成り立っているのかもしれませんね。引張強度、スゴイ。地球の物質スゴイ。