ホバリングを調べていたときに、トンボのホバリングは昆虫の中でも高度だという話が出て来ました。トンボは、その高度な飛行性能で小型昆虫を捕え、特に蚊のような病原媒介昆虫の数を調整する役割があるようです。幼虫であるヤゴの状態でも、蚊の幼虫であるボウフラなどを捕食するみたいで、食の傾向が一貫している気もしますね。トンボは、複数の高機能な要素を併せ持つようで、特にオニヤンマはスズメバチをも捕食することから、昆虫最強と言われることもあるとか。
高度な飛行性能
トンボは、昆虫の中でも前羽と後羽を別々に動かすことができる特殊な種のようで、ホバリングに加え、前進・後退・急旋回・垂直上昇という高度な飛行能力を持つようです。特にホバリングは、前羽と後羽を交互に動かすことで、まるで空中で静止しているようにも見えます。また、オニヤンマやギンヤンマなどの大型種は時速60km以上で飛行したり、ウスバキトンボなどの渡りを行う種は季節によって数千kmも移動したりするのだとか。オオスズメバチでも時速40km程のようなので、オニヤンマの速度は凄いですね。

高度な視覚情報
トンボの眼は複眼で約2万8千個もの個眼で構成されているようで、ほぼ360度の視野を持つようです。 死角や盲点がないというのは凄いことですね。また、トンボは、視覚での時間知覚(時間分解能)が高く、1秒間に300フレームの情報を処理できるそうです。ヒトが1秒間に65フレーム、脊椎動物で最も高かったのはヒタキという鳥で146フレーム、オニヒトデは0.7フレームだったとか。トンボの時間分解能は生物界でトップなのですね。

高度な抗菌機能
トンボの羽には、表面にナノピラーと呼ばれる高さ24nmの極微細突起が並び、細菌やウイルスの細胞膜を切り裂く能力があるようです。その殺菌能力は、1分間で細菌45万個/1cm2を破壊するレベルなのだとか。セミの羽にも同様の機能があるようですが、化学成分ではなくて構造的に抗菌というのは凄いですね。

その他の特殊能力
太陽の下を飛ぶトンボの羽の美しさは、構造色と呼ばれる微細構造による光の反射が要因のようです。太陽の下にいるトンボは、紫外線もバッチリなようで、赤トンボなどの色素は還元型で抗酸化作用があり、シオカラトンボはUVカットのワックスのようなものを出しているのだとか。
また、マイナス30℃の環境で越冬するオツネントンボは、特殊な不凍タンパク質を使っている可能性があることや、一部のヤゴはエラ呼吸ではなく、肛門から水を吸い込んで酸素を取り入れることなど、凄い能力を持つトンボがたくさんいるようです。
トンボは種の数も多く、様々な環境ニッチ(止水・流水・湿地・高山など)に適応している上に、それぞれの種が異なる時期に羽化・活動し、異なる獲物を捕らえるため、競合せずに共存可能なのだとか。

トンボ、スゴイ
トンボは水中にいるヤゴの時期と、空中にいる成虫の時期を持つ半水棲昆虫で、水域と陸域の栄養循環も担っているようですが、トンボの有する数々の高機能の能力は凄いですね。トンボ、スゴイ。地球の生体、スゴイ。