海鳥のリン循環を調べているときに知ったのですが、鮭によるリンの循環もスゴイのですね。リンは遺伝子や酵素の原料となるので、生物にとって必須の「いのちの元素」と呼ばれているそうですが、水に溶けやすく比重が重いので、下に下に溜まる傾向があるそうです。なので、リンが循環するためには下に溜まったリンを重力に逆らって上に持ってくる動きが必要になるそうです。
そこで鮭の存在が重要みたいなのです。川で生まれて、ある程度大きくなったら海洋に出て、6000km以上の距離を移動して、数年かけて元の川に戻ってくるそうです。海に流れ込んだリンは植物プランクトンが吸収して、それを動物プランクトンが食べ、それを鮭が食べると。広大な海を回遊してリンをかき集めているようなイメージなのかもしれません。鮭スゴイ。
話は逸れますが、淡水魚は川などの淡水しか住めず、海水魚は海しか住むことができないと思われますが、サケは川から海に下ってまた川に戻ってくるので、その両方に適応できる魚なんですね。淡水と海水の両方の環境に適応できる魚のことを広塩性魚と呼ぶそうで、プロラクチンという淡水適応ホルモンによって調整しているそうです。スゴイ生体システムですね。

そして広大な海を回遊して、体にリンを蓄えた鮭は、産卵のために重力に逆らって川を遡上するのですね。鮭は海の恵みを蓄えて川に運ぶ「海洋由来栄養物質」とも呼ばれるとか。鮭と言えば熊に捕られているイメージがありますが、産卵を終えた後も多くの生物にとって貴重な栄養を提供しているようです。鮭が海、川、森の栄養循環を担い、森や川を豊かにしているのですね。

鮭はまだ謎が多く、海のどのルートを泳いでいるのか、どうやって元の川の位置を正確に特定できるのか、などまだ未知の部分も多いようです。鳥が飛ぶことによって重力に逆らい、鮭が川を登ることによって重力に逆らい、その結果として大事な栄養が循環していると思うと、鳥スゴイ、鮭スゴイ。もちろん重力あってこその生態系ですが、重力という仕組みと、それに逆らえる仕組みを併せ持っている地球スゴイ。